茄子の牛
○汝が乗れば転びにけりな茄子の牛
(ながのればころびにけりななすのうし)
○冥土への道はなかなか茄子の牛 秋甫
○茄子の牛心許なき箸の脚 々
○茄子の牛千里歩けば冥土かな 々
瀬戸内寂聴の「ひとり」句集が届いた。
一頁に一句、なんと贅沢な装丁か、全句で84句なのであっという間の完読である。だいたいに以前から小説家の句というのはあまり好ましくおもっていなかったのであるが、然し彼女の96歳という年齢に大いに関心を持っているのだ。敬意さえ払っている。
「ひとり」は星野立子賞をもらっていた。書き物から受け取っている寂聴という人の無頼の生き方が、いいのか悪いのか、俳句ではそれなりにきちんと整頓されて収まっている感じがした。
後半に載せられているエッセイの7編はやはり小説家としての本領を発揮していて定価の2千円は少し取り戻せた感はある。